翔は小さく息を吐いて、沙羅を強く抱きしめる。この燃え盛る感情に自分の理性がついていけない。自制している分、想いが昂っているのだとしても、それでも沙羅が愛しくてしょうがない。
「ごめん…」
翔はそう謝りながら顔を上げ、沙羅の目をジッと見つめた。涙がこぼれ落ちる沙羅の頬を指でなぞり、もう一度優しく抱きしめる。
「ベッドでゆっくり休んでおいで。
その後、明日に向けてのミーティングをしよう」
沙羅を気持ち的に振り回しているのは分かっている。でも、今の翔にはこうする事しかできなかった。とにかく無事にこの任務を終わらせる事しか考えたくない。
仕事に対する自分のプライドが沙羅への想いより上回っている間は、とにかく沙羅との距離を縮めずにいたい。気を許せば、あっという間にぴったりとくっ付いてしまう。翔の中で初めて生まれた感情は強力なうねりとなって、翔の理性を破壊しそうな勢いだった。
沙羅は泣くのを必死に堪えながら、自分の部屋へと入って行く。そんな沙羅を見送る事もせずに、翔は外の景色をずっと見ていた。
沙羅を抱きたい… そして、キスをしたい…
マグマのような沙羅への感情と必死に戦いながら、翔は窓の向こうをぼんやりと眺めている。



