並んで座った二人の目の前には、少し雲がかかった青空とビル群の街並みが広がっている。最上階の大きなリビングの窓から見えるこの光景は、きっと、翔にとって特別なものになりそうだ。沙羅が隣に居たら、不思議とそんな風に思えてしまう。
「沙羅の将来の夢を教えて」
「将来の夢? もう大人なのに?」
沙羅はクスっと笑う。翔は沙羅のそんな笑顔をずっと眺めていたい。この先もずっと…
「今、働いている会社で、もっとスキルを上げて世の中の役に立つ人間になりたい」
翔は沙羅が働いている会社についても調べていた。人権デューディリジェンスの普及活動を主とした志の高い会社で働いている。
「でも、本当の夢は、愛する人と温かい家庭を築きたい。簡単なようで難しい夢だけど」
翔はそんな風に話す沙羅の顔を自分の方へ向ける。そして、沙羅の頬を優しく撫でながら、うんざりした様子で無理に笑って見せた。
「沙羅が他の誰かと結婚するのが、たまらなく嫌だ…
愛する人と温かい家庭? 想像するだけで相手の男を殺したくなるよ…」



