沙羅は助手席で龍也にそう返事を打っている。
翔は次の段階を予測し始める。龍也がすんなり受け入れるパターンと、会う事は必須で沙羅を振り回すパターン。多分、後の方に違いない。
「しばらくは返事はこないと思うから、ちょっとホテルでゆっくり休みたい」
メッセージを打ち終わると、沙羅は笑顔でそう言った。
翔は車を停め助手席のドアを開けて沙羅の手を取り、そして引き寄せる。やっと二人きりになれた…なんてロマンチックな事を考えながら。
ホテルの部屋に着くと、沙羅は翔のために美味しい紅茶を淹れ始める。
「ゆっくり休みたいなら、ベッドで横になればいいのに」
翔がそう言うと、沙羅は可愛らしく肩をすくめた。
「美味しいお茶を飲んで、気持ちをリセットする事も休養の一つなの。
寝る事だけが休養じゃないんだからね」
「さっきまで寝てたくせに」
翔はそんな意地悪を言って、沙羅の機嫌を悪くする。というか、わざとそんな事を言って沙羅を怒らせたい。恋愛脳は中学生レベルだという事に、翔は残念ながら気付いている。



