美魔男の完璧な仕事に心が溺れる



 沙羅は独り言のようにそう呟く。
 母の故郷、日本を訪れるのは十年ぶりだった。日本といっても、母の田舎しか知らない。東京や大阪は観光程度で訪れただけで、幼い頃の記憶にはあまり残っていない。
 でも、今回の一人旅は、東京をメインとしたスケジュールだ。
 日本へ留学している友達に会って、二日ほどそのメンバーと観光をする。そして、一番のメインイベントは、子供の頃によく遊んだ龍也に会うこと。
 金子龍也。母の田舎に住んでいた同じ年の男の子。七歳の頃、家族でキャンプをしていた時に、たまたま同じ川辺で龍也はおじいちゃんと釣りをしていた。
 同じ歳だったし、あっという間に仲良くなった。
 色黒で体が大きくよく笑う男の子だった。アメリカ育ちの沙羅に日本の遊びを教えてくれた。沙羅の周りにはいないタイプだったせいで、沙羅は龍也の事が大好きになった。