「鈴原は…いいの?」

「うん。
もし佐々木くんがなーちゃんさんと再会して
やっぱりなーちゃんさんしか考えられないなって思ったら、別れてくれていいから」


昔から物わかりはいい方で、お父さんやお母さんには褒められた。

……私は、それくらいしか取り柄がないから。


「佐々木くんのこと好きだけど、
それは友達としてで、絶対本気で恋はしないって約束する」

「………うん」


こんなの普通は間違ってる。

私が一番じゃないなら言うな!って怒鳴ってもいい。

だけど……せっかく佐々木くんがなーちゃんさん以外に目を向けて、前向きになってるのに

それを否定はしたくなかった。


「……とりあえずさ!
なーちゃんさんと再会するまでの、お試しの付き合いってことでどうかな?」

「お試し…」

「それなら私も『恋はしない』って守りやすいし」

「でも、なーちゃんと再会出来るのがいつになるかわかんないよ?
もしかしたら、一生会えないかもしれないし…」

「……まぁ、そのときはそのときだね!」


……本当は

『その時は鈴原を選ぶよ』って、言ってほしかったのかな。


『恋はしない』、なんて、無理だよ。




──私はもう、佐々木くんが好きだもん。


だからこの恋は、絶対自分の中に閉じ込めておかなくちゃ…。