今はサングラスは取ってマスクだけしてるお父さん。

表情全部は見えないけど、たぶん苦笑いしてる。


「あの…本当に神谷蓮司さんですか?
そっくりさんとかではなく…?」

「はい。本人です。
神谷は芸名で、本名は鈴原なんです」

「そうなんですね…!
え、じゃあ芸能界を引退したのって日菜がいたから…?」


みくるはチラリと一瞬私を見て、またお父さんに視線を戻す。


私のお父さんは、3年前まで俳優をやってた。

私が生まれる前から。だから、15年くらいは芸能界にいたことになる。

それが3年前に引退…。理由は世間に公表していなかったけど、

実際、私とお母さんと、普通の家族になるための決断だった。


……みくるは、ガッカリしたかな。

私のせいでお父さんが俳優をやめることになっちゃったって…私を責めるかな。


「結婚して子どもができたからやめた…わけじゃないですよね。あたしと同い年ってことは芸能界にいた頃にもう日菜は生まれてたってことですもんね…」

「………そうです」

「……子どもの存在を、ずっと隠して生きてきたんですね…」