「日菜に別れを告げられてから、ある人に会ってさ。
日菜が初恋の子だって気付いたけど
それまでの様子からしても、日菜は俺のこと全然覚えてないことはわかってて」

「ごめん…」

「いや、日菜を責めてるわけじゃなくて。
その人から、日菜にとってはつらい出来事だから、思い出してほしくないって言われて…すぐに動けなかった。

このまま諦めたほうが、日菜は幸せに生きていけるのかなって思ったこともあったけど…
……やっぱ、10年も忘れられなかった子のこと、
1ヶ月そこらで諦められるはずねーって思ってさ」

「うん…
私も、一緒」


苦い思い出も忘れなかった侑真くんと違って、私は忘れたけど

侑真くんのことがあったから、ずっと誰にも心を開かなかった。

頭では覚えてなかったけど、本当はずっと、ゆーくんのことを中心に生きてきたんだと思う。

記憶からは消えても、あの初恋を、心はずっと忘れられなかったんだと思う。


「ゆーくんのことずっと引きずってたから、
親しい友達も彼氏もいたことない」

「え…彼氏いたことないんだ?」

「ないよ」

「……そっか」


そう呟く侑真くんは、どことなく嬉しそう。