「お父さん、風邪うつしちゃうから…」
「気にするな。
それに、うつしたほうが日菜は早く元気になるかもしれないしな」
「仕事に支障でるんでやめてくださいよ」
やめてと言うわりには、お父さんの前にうどんの器を置く美宙くん。
どうせ言っても聞かないからって、わかってるからだろう。
「……うつしたらごめんなさい。美宙くんも…」
「日菜は昔から『ごめんなさい』が多いな。
こういうときは『ありがとう』でいいんじゃないか?」
「ごはんを作ってくれてって意味ならそれ蓮司さんに向ける言葉じゃねぇっす」
美宙くん、正論。
お父さん的には、『そばにいてくれて』って意味でありがとうって言ってほしいんだろうな。
べつに一緒にいてほしいって言ってないけどな?
「一応…ありがとう。
あと、言っとくとお父さんとお母さんも『ごめんなさい』多いから」
私が二人にごめんなさいと言ってしまうのは
二人が私にごめんなさいってよく言うから…。
お互いに、ちょっとでも迷惑をかけることに敏感になって、相手の顔色をうかがってしまう。それがクセになってしまってる。そうやって育ってきたから。



