「……美宙くんも子役だったよね?」
「おれは売れてないからそんな世話してもらえてないのー」
「……ごめん」
「いーのいーの。おれはこういう裏方作業のほうが性に合ってるからさー」
キッチンに立ってる美宙くんは、そう言うだけあって手際はいい。
美宙くんは元俳優で、お父さんとは同じ事務所に入ってた。
小さい頃にお父さんと共演してからお父さんにすごく懐いてたらしい。
美宙くんの言った通り、子役時代はチヤホヤされたけど、大人になるにつれて人気もなくなり、俳優の才がないことに気付いてしまったそうだ。
そうして美宙くんはタレント業をやめ、その時の事務所の裏方の方に勤めている。お父さんも同じで、同じ芸能事務所の裏方として働いてる。
「もう出来るよ。
日菜嬢風邪ひいてるから、蓮司さんと一緒の空間で食べないほうがいい?」
「そうだね。
お父さんにうつしたら嫌だしね…」
美宙くんが出来上がったうどんを私の前に持ってきてくれると、
バン!とドアが開いた。
「俺も日菜と一緒にごはん食べる!!」
私と美宙くんが気を利かせたのも無視して、やってきたお父さんは私の向かいに座った。



