「……日菜が甘えてくるの、レアだなー」


私を抱きしめ返してくれる侑真くんの声が、少し嬉しそうだった。


「……不安にさせるようなこと言って、ごめん。
日菜といる間に、なーちゃんの話をするべきじゃなかったな。
けど、俺にとってなーちゃんがどんな人か、伝えておきたかったんだ。
その上で今は日菜が好きだってこと」

「……うん…」

「帰ろっか」


侑真くんが私の頭を撫でて、優しく言う。


“その上で今は日菜が好き”


そうは言われても、きっとこうしてデートができるのは最後だと思って


「手……繋いでもいい…?」

「いいよ」


最後のわがまま。


誰かに見られてもいいから、

最後だから……今だけは恋人らしくいたいと思った。