(おえっ…満員電車に酔った…)


駅のホームで、人が改札の方へ流れていく中。

私は一人ホームのベンチに座り、カバンを抱きかかえるようにして(うずくま)っていた。


(はぁ…これ毎日とかしんど…)


ふぅー…ふぅー…と吐き気を抑えるように呼吸を整える。

だけど、まだ目の前には多くの人がいる。


(ダメだ…やっぱ気持ち悪…っ)


今度こそ本当に吐いてしまいそうになる。

もう限界かもしれないと思った時。


私の目の前で誰かが足を止めた。


「………」

「……大丈夫っすか?」


たまたま誰かが止まっただけ、と思っていたのに

投げかけられた言葉で、私に言ってるのかと思って顔を上げた。


「……え…」


私の前に立っていたのは、

金髪で、ピアスの数もすごくて、制服を着崩している高校生の男の子。


(や、

ヤンキーだ……!!)


やばい人に話しかけられたと思って、一瞬で吐き気が引っ込んだ。


「……大丈夫?」


もう一度話しかけられる。

声はぶっきらぼうで、少し怖い。