初夏のまだ涼しげのある風にあたりながら、一人で考える。
翔斗…、ね。
私が困った時、いつでもそばに居てくれた翔斗。
お母さんと喧嘩したとか、膝擦りむけたとかそんな些細なことで泣いた年長時代、いつもそばに居てくれた。
小学校の時にいじめっ子からお父さんがいないことを揶揄われた時、すぐに駆けつけてやっつけてくれた。
友達とうまく行ってなかった時には、何も言ってないのに気づいてくれてちょっとだけだけど慰めてくれた。
普段ツンとしてて冷たいのにふとした瞬間に優しくなる、そんな翔斗に、気づいたら惚れていた。
お弁当を食べ終わった翔斗たち男子が中庭に来て、バドミントンを始める。
そんな屋外でやったら風でうまく飛ばないだろうに。
そう思ってたら案の定、早速シャトルが風に煽られて別の方向に飛んでいく。
友達と笑い合う翔斗を遠くから眺める私は、もしかしたらいつまでもこのままなのかなって思った。
柚月には“告白されるかも”とか言われたけど、翔斗の性格上そんなのあり得るわけがない。
ま、別にこの中のいい状態がいつまでも続くなら、それに越したことはないのかもしれないけど。
翔斗のことを考えるたびに結局はその結論に行き着く私は、少し現実を甘く見ているのかもしれない。
翔斗には他に好きな子がいるのかもしれない。
何かが起こって、離れ離れになるかもしれない。
いや、その時はその時か。
そうだよね。
クレープを食べた後の時から引っ掛かっていた私たちの関係。
今の私たちは“友達”であり、“幼馴染”。
とりあえず、それだけは確かなのだから今はこの肩書きを大切にしよう。
ほら、恋は片思いの時が一番楽しい、なんて言うしね。
それは成功者の言う言葉だけど。
不意に、翔斗と目が合った気がした。
でも、すぐにそらした。
空を見上げると、雲一つない快晴が広がっていた。
“幼馴染”
うん。これでいいや。