ひんやりとした感触が手に伝ってからアイスが垂れていたことに気づき、なんでもっと早くに気づかなったのだと後悔する。
「あちゃ…」
独り言を呟いた時、クレープが手からすり抜けた。
「手、洗ってこいよ。」
いつの間にか帰って来ていた翔斗が、クレープを持っていたのだ。
「あ、うん。」
言われるがままに手を洗いに行った私は、帰ってきて目の前の光景に目を奪われた。
「…、アイス、溶けてたからもらったぞ。」
ホイップクリームを口の周りにつけながらクレープを頬張る翔斗はなんだかリスみたい。
「意外とこれ、いけるな。ありがとな、連れてきてくれて。」
私が気にしてること、わかってくれてたんだ…。
「…、うん。」
「ほら、お前も食べろよ。」
そう言って、クレープを差し出してくる。
ぱく。
翔斗の手に収められたままのクレープを思いっきり齧ったせいで口の周りにクリームがいっぱいついた。
「おいおい、小学生か?」
頭上から、翔斗の呆れた声がしてきた。
「翔斗だってついてるよ。」
「え、嘘まじ? どこ?」
「うーん、そっち。」
「え、こっち?」
「違う違う! 反対!」
「あ、ベロ届かねぇ。」
「おもろっ!」
そう言い合って、二人で笑い転げる。
いつの間にか女子大生の声は耳に届かなくなって、心の中のもやが晴れるのを感じた。