「あっま! おいしっ! さいこー!!」
土曜日の昼下がり、私は最近流行りの別腹スイーツの店に来ていた。
そして勿論、隣にはこの男。
「なんだこれ甘すぎだろ。絶対無理。このホイップの量は無理。無理無理。」
甘党でもないくせに一緒に来てくれるのは嬉しい限りだけど、店に入った時から食べてもないのに無理としか言わないのはちょっと腹が立つ。
「えーなんで美味しいよ?
特にこのいちごとの相性の良さよ! 一口でいいから食べてみなって。」
「絶対無理。
てかなんなんだこの砂糖とミルクの多さ。大人しくブラックにしとけばよかった…」
私が美味しくいちごスペシャルを食べている間、翔斗はそれを見ながらカフェオレを飲んでいる。
「食べないの…?
ほら、翔斗が好きなアイスもあるよ?」
「いらない。てか俺気分悪くなったからちょっと外の空気吸ってくる。」
「え、あはーい。行ってら」
「おん。」
流石にここ来るべきじゃなかったかな…。
ほとんど減っていないカフェオレを見て、そう少し後悔する。
翔斗、こんなキラキラしたお店好きじゃないし。甘いのも苦手だし。
『彼女が行きたくて連れて来た感半端ないよね。』
『うわ、我儘彼女でた!』
『あんなかっこいい彼氏なんだからそんなんしてるとすぐ見放されるよね』
『ちょっとは相手のことも考えて店選ぶべきだよね。』
すぐ近くに座っている女子大生たちの言葉がここにまで聞こえてきて、余計気持ちが沈んでいくのを感じた。
あーそうですよ、翔斗は賢くてカッコよくて運動もできて本当に全部揃ってるのに私は顔も成績も愛嬌も全然だしなんもできないバカですよーだ。
でも好きになっちゃったんだからしょうがないじゃない。
昔っから翔斗がなんであんな子と仲良くするの? 幼馴染で可哀想って他の女子に言われてることくらい知ってますよーだ。
私はワガママで翔斗のことも何も考えてないダメ人間ですよーだ。
でも私たちをカレカノって思ってくれててありがとうございますぅ!
そこまで思って、少し止まる。
あれ、じゃあ私たちは何?
一緒に遊びに行ったり、登下校もしたり、昔は手を繋いだこともある私たちは、何?
高一にもなってデートに行く人って大体恋人かこれから恋人になる人じゃないの?
そう、結局私たちはただの幼馴染。
それ以上でもそれ以下でもない。
この前柚月に言われた言葉が、心の中で反響する。
“先に取られちゃうかもしれないよ”
取られるなんかない。
翔斗に限ってそれはない。
そう思っていたのは、私だけ何かもしれない。
そう考えたら、余計悲しくなる。
『てかあれもしかして兄弟?』
『あーなるほどだからワガママでもいいわけだ。』
私のことを話していた女子大生たちの会話はエスカレートして、終いには兄弟疑惑まで浮上した。
あーあ。いっつもこうだ。
翔斗も他のみんなも、私たちを“恋愛”と言う面で見てくれない。