視界がぼやけて見えないけど、翔斗が顔を歪めた気が、した。
次の瞬間、短く息を吸ってから翔斗が口を開いた。
「俺とお前、咲田翔斗と花井緋鞠は…兄弟なんだよ。」
予想外の言葉に、クラス全体が元の静けさを取り戻す。
え…
どう言うこと…
「お前の父親が浮気したんだよ、俺の母親に。
そんで、お前の他に子供を作ったんだよ!
それが俺なんだよ!
わかるか、緋鞠っ。俺とお前は、腹違いの兄弟なんだよ…!」
そんなわけ…いや、考えてみればわかる。
私たちは仲がいいのに、お母さんたちがあまり話していなかったわけ。
私も翔斗も母子家庭なわけ。
確か遠い昔、翔斗のお父さんは事故で亡くなったと聞いた。
私のお父さんだってそうだ。
翔斗が引っ越してきたのは、お父さんが死んだという知らせが入ったすぐ後だった。
きっと、私のいる町に来たのはただの偶然だろう。
私と翔斗は、兄弟だったんだ。
「そんな、…。
なんで。なんで、なの。」
「知るかよ俺に聞くなよ!
ただ一つ言えることは、
兄弟と付き合うなんか気持ち悪いんだよ…!
俺とお前は、好きになってはならなかった者同士なんだよ!!」
言い放たれて、少し納得する。
驚きが強すぎて、涙はもう出ていなかった。
なんで昨日いきなり言われたのか。
きっと、翔斗が16歳になったからだ。
お母さんに本当のことを教えてもらったんだ。
兄弟と付き合うなんか気味が悪いって思うのも当たり前。
翔斗の反応は、翔斗の判断は正しい。

