幼馴染、なんかじゃない




開けない夜はない。


どんなに悲しいこと、辛いことがあっても、決して開けない夜はない。

そう、どこかで聞いたことがある。




気づいたら空は明るくなっていた。


こんな顔で学校行きたくない。


翔斗に、会いたくない。


そう思うけど、そんなに世界は甘くない。


私は学校に行くことになるし、世の中は忙しなく動き回っている。



予鈴がなると同時に学校に着いた私。



教室には既に翔斗が居た。



なんで別れたいのか聞くくらいの権利、私にもあるよね。


教室のドアの前で固まっていたけど、勇気を出して前に進む。


泣いちゃだめ、泣いちゃだめ。

強くそう念じながら翔斗に話しかけたけど、結局思うようにはいかなかった。



「なん、で… 別れるって言い出した、の?」


意図してそうなったわけではないけど、その声は翔斗にしか聞こえないほどの小さな声だった。

読んでいた参考書から目を離して、こちらを見る翔斗。


目が合って、三秒。


「別に。」


また、参考書を見る。


「別にって…、あまりにも、ひどくないかな…?」


声が大きくなってしまった。

近くの人たちが何事かとこちらを見て、話を止める。


次第にそれは広がって、クラス全体が静かになった。


「ねえ、翔斗…!」

「別れるのに理由なんかないだろ。」

冷たくされて、涙が余計に出てくる。


横から、篠原くんが口を出してきた。


「何がどうなってるか知らないけど別れるならちゃんと訳は説明すべきだ。」


柚月も、私を援護してくれる。

「え、ちょっと待ってどう言うこと? 咲田くん、あなた何考えてんの?」


優しく、小刻みに私に背中を叩いてくれる柚月の優しさがまた痛いほど悲しい。


何も伝えれてなくて、ごめんね。


何が起こっているのかを察したクラスメイトたちが数人、口を開く。


「いくらイケメンでハイスペックだからって彼女をそんな冷たくあしらうなんて、ね。」

「流石にないだろ咲田。」

「緋鞠ちゃんが可哀想じゃん。」