緊張が解けて、体の力が入らなくなる。


地面に座った私と翔斗の目が合った。


「怖かったよぉ…!」

目から涙が溢れ出てきた。

「心配させんなよ、緋鞠。」


隣に座ってきた翔斗が私を抱き寄せた。


「翔斗、ありがとう。ほんとのほんとにありがとう…」

涙が、翔斗の少し汗で濡れた体操服にどんどん吸い込まれる。

腕を翔斗の体に回して、抱きついた。


「もう私、死ぬかと思った。


翔斗にあえないまま、死ぬかと思った。」


翔斗はいつだって、私のヒーローだ。


「まだ何もしてないのに、死なせるかよ。」


翔斗はそう言って、私を抱きしめてくる。

「なんで、来てくれたの…?」

言ってから柚月が伝えてくれたんだと分かったけど、翔斗の答えはそんなものじゃなかった。


「好きな女が困っていて、助けに行かない奴がどこにいるんだよ。」


一瞬で、世界が晴れやかになった。


今、言ってくれたよ、ね…? 好きって。


空耳じゃないかと思ってしまうほど、あっさりと翔斗はそう言った。


一回私から手を離して、面と向き合う翔斗。


今度は、しっかりと私の目を見て言った。


「昔からずっと好きだった。俺と付き合ってください、緋鞠。」


止まったと思ってた涙が、また出てくる。

気づいたら、翔斗を抱きしめていた。


「私も昔から、翔斗のことがずっと好きだったよ。」


「じゃあ、」


「私からも、よろしくお願いします。」

丁度体育祭の後夜祭が始まって、季節外れの花火が空に浮かんだ。



10月の秋の夜だけど、私は隣に座る人の温もりで寒さは感じなくなった。