ほんとに私殺されるの?


やめてよ。

どうしよう。

まだ私、翔斗に好きだって言ってない。


お父さんのこと、知らない。


殺さないでよ。


そんなことしたら捕まるよ。



やめて。やめて、やめて!



足が、何かに当たる。



行き止まり。


全身が、ガクガクと震える。

10月なのに汗が噴き出てきる。



先輩の顔が、目の前にある。

声を出そうとしても、出ない。

翔斗、翔斗、翔斗…!


「おい!」

鋭い叫びと共に、何かが飛んできて先輩のうちの一人に当たる。


バトンだ。


「何やってんだよお前ら! 俺の緋鞠に、何やってんだよ!」

驚いて声も出ない先輩に、翔斗が詰め寄った。


殴りはしない、けど、本当に怖い。

「お前それでも人間かよ! は? 人殺し!!」


「わ、わたー」
先輩が何か言いそうになるのを翔斗が遮る。


「二度と俺の前に顔見せんな。学校やめろ。お前らが学校に来る資格なんかない。


人殺しが学ぶことなんか、一切ない。


分かったらとっとと出ていけ!」

まだ先輩は固まってる。

「出ていけよ!!!」


これ以上ないくらい大きな声で翔斗が怒鳴って、急いで出て行った。