この恋は決して叶わない。
 
打ち明けることすらできず、いつか忘れる日が来るのを願うしかないのだ。
 恋がこんなに苦しいものだなんて知りたくなかった。
 心の奥底に秘めた切ないぐらいに大きくなってしまった想い。
 でも、貴女は今日、私の前からいなくなる。
 言ってしまいたい。

そうしたらこの胸の痛みも消えるのだろうか。
 抱いていることすら許されないであろうこの苦しみ。
 
彼女がこっちに歩いてくる。
ゆっくり、穏やかに、いつも通り。
 貴女以外は時間が止まったかのように静かになった気がした。
 ああ、やっぱり、私は貴女が好きだ。
 あのキラキラとした光が宿る目に私はどう写っているのだろうか。
 きっとただの1人の知り合いに過ぎないことは知っている。
 それでも、。
 私は無理矢理笑顔を作る。
 差し出すのは小さなミモザの花束。
 気づかないで。
 貴女にだけは知られたくない
 二つある美しい花の花言葉。
 彼女はそっと花束を受け取って、穏やかに微笑んだ。
 ありがとうと唇が動く。
 これで終わりなのだ。
 本当は、少しだけ、ほんの少しだけ、期待していたのかもしれない。

貴女が私の秘めた心に気づいて、しょうがないなあって言ってくれるのを。
 裏切られたとは思わない。そんなこと思う資格などないのだ。
 ただちりっとした痛みが心の奥を焼いた。
「秘密の恋」
 風が彼女の抱えた花の艶やかな匂いをふわりと巻き上げた。
 その香りはいつまでも私を包み込んだ。