アリス人形

「…んっ。」

ふと、眩しさを覚えた。

「気が付いたピか?」

「う……ん。」

耳元で声が聞こえ、亜里珠は腕で光をさえぎりながら目を開いた。
が、肝心の声の主が見当たらない。

「よかったピ。2人が海に落ちるのを見たときは心臓止まるかと思ったっピ。」

「…はあ。」

そして、頭上にいた声の主を見るなり、亜里珠は「浦島太郎」を思い出した。

そう、やたら語尾に「ピ」を付けていた声の主は、鳥ではなく、亀だったのだ。

(此処は…竜宮城?)

そんな亜里珠の淡い期待とは裏腹に、帽子屋の騒々しい声が聞こえてきた。

「アリスー!起きたかー?」

「…帽子屋さん、うるさい。」

海におもいっきりダイブしたせいか、寒くはないものの、頭痛で頭がガンガンしていた。