アリス人形

亜里珠が顔を上げると、黒い人影が大きな板を持って立っていた。

「おせーよ、ビル!」

帽子屋が怒鳴ると、人影は太い声で、

「すまない。ははは!だがしかーし!ヒーローは遅れてやってくるものだっ!」

と、ふんぞり返った。
突然のヒーローの登場に亜里珠は呆気にとられた。

「さあ、ハリネズミ。お兄さんが相手になってやる!」

と、トゲの塊を指差すヒーロー。ふと、亜里珠が声を上げる。

「ってか今、帽子屋さんあの人のこと“ビル”って!?」

「んあ?ああ。アイツがトカゲのビルだけど?」

帽子屋の言葉に亜里珠はこの先が不安になった。この短時間で亜里珠はビルに苦手意識を持ってしまったからだ。

「…マジで?」