アリス人形

「此処には、戦争なんてないって言うから。私は…私の平和を守るためにここに来たのよ。それが何?」

その答えに、シロウサギの表情が曇った。

「アリス、君は妹を助けるために此処に来たのですよ。」

シロウサギが哀しい瞳でアリスを見据えた。しかし、アリスは首を傾げ、また口を開いた。

「妹…?ふふっ…私にはお姉様しかいないわ。」

口調が明らかにさっきまでのアリスとは違った。帽子屋はアリスの前に立ち、嘘だろ?と呟く。

「2ndアリスがとり憑いてしまっているねぇ、これは。」

と、チェシャ猫の口から珍しくため息。
突如、アリスが高々に笑い始めた。

「あははははっ!

…よくわかったわね。そう、私は2ndアリス。この子の体はもう私のモノ。私の平和、秩序を乱すものはチェシャ猫…例え貴方だとしても許さないわよ?」

「はいはい…相変わらず面倒だねぇ、2ndアリスは。」

動じないチェシャ猫を横に、帽子屋は頭を抱えていた。

嫌な事を、鎖に絡まった記憶を、思い出そうとしていた。

(……───ありす。)