アリス人形

突如、パッと呪縛が解けたかのように、アリスの身体が自由になった。

「レオ…!!」

悲鳴に近い声で、アリスは亜里珠の知らない名を呼ぶ。

56年前…物語を間違え、命を落としてしまった悲劇のシンデレラ。

──…4thアリス。

掛け寄るアリスに、帽子屋の指先が、ぴくりと反応した。

「起きろ…お願いだ、目を覚ましてくれ。なぁ、レオ………レオナルド…!」

まるで男のような口調。
しかし、愛に溢れた声色。

帽子屋の閉じた瞳に、やがて沸き上がる想いが溢れだし、ポロポロとこぼれ始める。

「ァ…リス……否、……ア、ィ…リー…。」

うっすらと開かれた金色の瞳は潤い、

「逢いたかった…。」

遠くの意識、亜里珠の心がチクリ、痛みを覚えた気がした。だが、

「馬鹿…好きな奴を助けてやられるなんて、格好良すぎるだろ。」

アリスはそう、穏やかに微笑んでみせた。帽子屋の頬にそっと手を添える。

アリスは察していた。
自分はもう、過去の人間に過ぎない事を。

「迎えに…来た…の、か?」

「違ぇよ、ばーか。」

そのほほ笑みは、まるで総てを容そうとする女神。
小さな口から漏れた言葉は、まるで祈りを謳うかのように優しく──、

「この力、全部…レオに。」

「!!」