「ごめんなさい。えっと…シロウサギ、さん。」

気付けば亜里珠は謝罪の言葉を口にしていた。パルス…いや、シロウサギはそんな亜里珠に対し、やれやれ。と言った感じだ。

「シロウサギ、で結構ですよ。
…もう一度確認しますが、貴方はアリス、ですね?」

亜里珠はこくんと頷く。

「うん。…確かに私は亜里珠だよ。」

シロウサギはそれを聞くなり、ぴょんぴょんと扉へと向かった。

「さあ、行きますよ。」

「え…どこへ?」

亜里珠は、不安や疑問を胸にしまい込み、恐る恐る立ち上がった。

「妹さんがアリスと勘違いされ、誘拐されたみたいです。あの匂いは多分…。
連れ戻したいのなら…案内致しますよ?」

「!?…い、行く!」

それが、悪魔との契約になるなんて、この時の亜里珠にはまだ分からなかった。

「…では、僕を追いかけて下さい。アリス。」

それだけ言うと、シロウサギは部屋を出ていった。

「ま、待って!」

そして、固まった両親を背に、亜里珠はシロウサギを追いかけ始めた。