例えば…そう。眼鏡をかけた老人が眼鏡を探すように、捜し物が思いの外近くにあると、逆に見つかりにくい時がある。

亜里珠もそうだ。探している黒ウサギが真後ろにいるというのに、全く気が付かなかった。

黒ウサギは、赤い目を細め、世界に溶けて消えた。

そこは、闇だった。

しばらく亜里珠は落ち着かない様子で辺りを見回し、行き場もなく彷徨った。

「人馬〜?」

声は虚しく轟き、返事はない。

孤独感からか、逃げ場のない恐怖に潰されそうになる。

その時だった。