アリス人形

ぐわん。と、地面が揺れた気がした。

瞬きをした瞬間、そこは闇と白い光の中だった。

何があったのだろうか。
亜里珠はゆっくりと辺りを見渡す。

空には気が遠くなるほどの星屑。両側にはコンクリートの壁。酷く静かな路地。見覚えのある民家。

バラや芋虫、帽子屋の姿は何処にも、ない。

「戻って…これたの?」

今までのは一体何だったのだろうか。刹那な夢だったのだろうか。それとも、月が幻想でも魅せたのだろうか。

嬉しさなのか、切なさなのか、ただ興奮しているだけなのか…亜里珠は胸にざわざわとした違和感を覚えた。

胸に手を当てた時、ドクンという心音と共に、さらに胸の騒めきが増した。

亜里珠はエプロンドレスを着たままだった。

「夢じゃ、ない。」

眼が泳ぐ。動揺が隠せない。

ひとまず、こんな姿近所の人にでも見られたらまずい。

「ともかく、家に入ろう。」

亜里珠は見慣れた、しかしどこか懐かしい我が家のドアノブに手をかけた。