「…でも、」

その目には思いが溢れ、ぐっと堪えた拍子にそれらはこぼれ落ちた。

「怖いの…!」

溢れる思いは止まることを忘れ、次々に流れ落ちる。

アリスは思った。
この子は今までのアリスの中で最も弱く、脆い。真実と向き合った瞬間に、花の如く儚く散ってしまうだろう、と。

何も返せないアリスの目の前、亜里珠は静かに声をもらした。

「でも…そぅ、だね」

──ジャラ、

いつの間にか、亜里珠の手は鎖を掴んでいた。

「前に進まなくちゃ…いつになっても夢は、醒めない……そうだよ、ね。」

何処か遠いその眼差し。その奥には、強い光。

「怖い。でも…私、ちゃんと向き合わなくちゃ……。」

──ピシッ

鎖にわずかだが、ヒビが入った。

「カクゴ……覚悟、しなくちゃ。だから…貴方と話してる暇はない。…そう、はや、く……ハッ!早く行かなくちゃ!体を返して、今すぐ返して!!!!」

「駄目だよ、亜里珠。君には無理だ…」

「──ッ!!」