鎖の長さは徐々に長くなり、亜里珠の持つ箱をつつんてゆく。

亜里珠はそれを大事そうに、さらにその細い腕で包む。

声が聞こえた。

それは、帽子屋と芋虫と名乗る男の声。

何故か自分の声も聞こえた。

首を傾げていると、目の前に、長い金髪を後ろで縛っている子供が現れた。

「はじめまして、5thアリス。」

その子共を少女と思っていた亜里珠は、その声で彼が少年だということを認識し、少し戸惑った。

「5thアリスって…私の事?」

亜里珠は不思議と理解できていた。自分は黒ウサギによって選ばれた、5番目のアリスなのだと。

「ふふっ。僕は3rdアリス。今、ちょっと君の体を借りてるよ。」

「え、借りてるって…私は今、」

3rdアリスの言葉に、亜里珠は眉間にしわを寄せた。

「此処は君の意識の中さ。気付かなかったの?」

にっこりと笑う3rdアリス。亜里珠は困惑した。

「え、そんな!」

「それに、前2ndアリスにも体貸したじゃんか。」

「そういえば森の途中で意識が…やだ、体返してよ!」

「まあまあ。今は少し我慢してて。僕は君と少しお話がしたいだけなんだ。」

近付き、アリスはそっと箱を撫でた。亜里珠は突然恐怖に襲われ、反射的にその手を弾き返した。

「あっ…ごめんなさ…。」

同時に罪悪感に襲われたのだろう。謝った亜里珠はしゃがみこみ、涙声で言った。アリスは優しく、大丈夫だよ、と微笑む。

「ごめん。でもお願い、コレには触らないで…。」

怖かったのだ。この中身を見、見られることが。
怖かったのだ。この中身の正体を知ることが。

「亜里珠…君は真実と向き合わなきゃいけないんだ。でなきゃ、君は元の世界に還れないし、望みを叶えられない。」

と、アリスは言う。途端に亜里珠がバッと顔を上げ、吠えた。

「わかってる!わかってるよ!!」