「どうしたの?」
わたしは、この前から気になっていたことを頭に思い浮かべた。嫌な記憶はなるべく思い出さないように。
「……栗栖、さんの事、真間さんに言っておいた方がいいと思う?」
「……ん~、難しいね」
バシャンッと、菜摘が立ち上がって、真顔でゆっくりとこっちに歩いてくる。頭の中で色々考えている顔だ。
「特には何もなかったんだから言う必要はないと思うんだよね、それに、それだけを話すとドン引きな内容でしょ?」
「……う、ん」
正直、暁陽と菜摘以外に言える気がしない。
「今、マロンは実家でほぼ監視されてて、こっちには来れない状態らしいし、大丈夫じゃない?」
「うん……」
この事で、真間さんとの間がおかしくなってしまうのだけが、怖かった。
「美羽だって、特に問題のない真間さんの元カノの話とか、イチイチ聞きたくないでしょ?」
確かに……。
「……そう、かも」
聞かない方が、見ない方が幸せな事も、お互いあるのかも知れない。
「ナニかあった時、まぁ大丈夫だと思うけど、その時一緒に考えよ? ちゃんと相談のるからさ」
「うん、ありがとう菜摘」
「出よっか? 二人とも首を長くしてまってるかもよ?」
「ふふ……、そうだね」
立ち上がる菜摘の後を追うように、わたしもお湯から出るために立ち上がった。


