「早かったね、けっこう待った?」


 真上から声がして顔を上げると

 あっ……。


「いえ、電車間違えたみたいで、少し早く着いただけです」


 シンプルな生成りのTシャツの上にカーキのシャツをジャケット代わりに羽織り、下はダメージデニムに落ち着いた色合いのスニーカー。アクセサリーに革のネックレスとバングル。スーツじゃない真間さんは、少しだけ幼く見えたけれど、とてもオシャレで素敵だった。


「……」


 やっぱり、最初に着ていた方にすれば良かったな……。


「氷室さんの私服、ナチュラルでいいですね」


 !?

 さすが営業さんだ、こんな普段着もちゃんと誉めてくれる……。


「あ、ありがとうございます、真間さんも素敵です」

「ありがとう」


 言われ慣れているのか、社交辞令ととらえられたか、サラッとお礼を言って彼は、ゆっくりと歩き出す。


「少し早いから、公園を通って行きませんか?」