氷の華とチョコレート


「……ん」


 意識が、記憶が……、途切れてしまいそうなほど長い、ながい口づけの後、彼が力強く動き始める。痛みが、麻痺して、また別のものに変わってゆく。


「……っ」


 途切れそうになる意識、断片的に目に映る景色。

 部屋の天井、揺らぐアロマライトの薄暗い室内で見えずらい、彼の真剣な表情。力強い愛撫が、本当に、全然違う人みたいで……。


「――…んっ、……ぁぁっ!」


 我慢出来ずに上げてしまう、私じゃないみたいな声。恥ずかしい、なんて、思う余裕さえなくて……。


「……美羽っ」

「――……んンっ!」


 何がなんだか、わからなくなって、彼の背中にしがみつくのが精一杯、もう、このままバラバラになって壊れてしまうそう……。


「……えいき、さっ、……ん」


 怖くなって、背中を抱きしめたまま彼を呼んだ。

 そのまま、あごをすくわれて深く重なる口付け、まるスイッチが入ったように、彼は、力強く私を抱き寄せた。

 怖い、でも……、嬉しい……。


「……美羽」

「瑛生、さん……」


 私も、ギュウッと彼の背中を抱きしめる。

 ぴったりと吸い付く、肌の温度が心地よくて、このままずっと一緒に溶け合ってしまえればいいのに。


「美羽」

「……っ」


 もう一度、深く重なる唇が、ゆっくりと首筋へ降りて。 


「……っ!」


 私を狂わせてゆく。激しく揺れる天井、何度も、なんども……、力強く。


「美羽っ……」

「えいき、さ……ん」


 甘い痛み、途切れとぎれの意識。力強い彼の胸の中で、記憶が途切れるまで、私は、彼の名前を何度も呼び続けた…―――