氷の華とチョコレート


「それより美羽……」


 暁陽は、あごで向こう側をさした。

 見ると、栗栖さんの弟さんとお母さまが警察の車に乗る所で…―――


 あっ……。


 気付いた私に、二人は、深々と頭を下げてくれた。

 菜摘に離れてもらい、私も見送るために、頭を下げる。

 また、ご家族の方に留めてもらわなければ、平穏ではいられないのかな?


「お疲れ……」


 荒谷さんが、抑揚のないテンションで現れた。さっきの声は、やっぱり荒谷さんだったんだ?


「エーキ、先に警察に行って色々提出しておくから、取り合えず病院寄って来な? 腫れてきてる」

「……あぁぁ、ヤバいな、仕事が」


 えっ!? 見ると、少し赤く腫れて来ていた。急いで冷やさないと!


「こ、コンビニでとりあえず、氷買ってきますね!」


 あわてて駈け出そうとしたら、もつれた足で、石畳につま先を引っかけて転びそうになり、その場にいた全員に捕まえてもらい転ばずに済んだ。


「氷室さん、落ち着いて?」

「あ、りがとう、ございます……」