氷の華とチョコレート


「∞▼βΩα■〼卍凸★凹@ω!!!!!!」


 這うように立ち上がって、ご家族とは逆の方へ逃げようとした栗栖さんの手首を、真間さんがしっかりと捕まえた。


「テメェ、Δ〼卍★凹ジャマだΣ■〼∞▼β放せっ!!!!!」


 至近距離で真間さんに殴りかかろうとした所を、真間さんのもう片方の手が捕まえる。


「お願いします」


 聞いたことがある声が別の所でして、車道側から男の人達が現れると、栗栖さんを一瞬で拘束した。


「……!?」


 えっ? な、何が、起きたの?

 目の前で、二人の男の人に腕を抱えられていた栗栖さんが、暴れるように真間さんに何かを叫び始める。

 私は、呆然と、そのまま連れて行かれる栗栖さんを見ていた。……もしかして、警察の人?


「氷室さん、大丈夫?」


 さっきまで栗栖さんを捕まえていた真間さんが、目の前で心配そうに私を見下ろしていた。殴られた頬が、まだ痛々しくて……、胸が痛い。

 
「……は、い」


 真間さんにそっと手を握られて、自分がまだ震えていることに気付く。色んな事が一気にあり過ぎて、全然頭がまわっていない。真間さんの手を握り返して、落ち着かせるように、小さく深呼吸を繰り返した。