氷の華とチョコレート


 真間さんの口元が、少し赤く見えた。

 駆け寄って、自分のハンカチを差し出すと「大丈夫」と笑って、自分のタオルハンカチで口元を拭う。そのハンカチが、ゆっくりと赤く染まる。


「……っ」

「少しだけ、口の中を切っただけだから……」


 殴られたあとの頬が痛そうで……。泣きそうな気持ちになった。


「美羽っ、そんな弱いヤツ、捨ててコッチ来い!!!!」


 真間さんを殴って、得意気な顔の栗栖さんが、私の肩を捕まえようとまた手を伸ばしてきた。


「……っ!?」


 逃げたいのに、咄嗟なのと恐怖で身体が固まってしまって……。やだ、……このままつかまれてしまう? 私は、ギュッと目を閉じて身構えた。


「心配してくれるのは嬉しいけど、前に出たらダメだよ?」


 えっ?

 二の腕をひょいとつかまれて「前に約束したよね?」と言って、驚く間もなく、気付いたら真間さんの背中の後ろに収納されていた。


「……???」

「お前っ、Δ〼卍★凹が、Σ■〼Σ∞▼βΩ弱いクセに邪魔なんだよ!!!!」