氷の華とチョコレート


「迎えに、来た……、一緒に行こう!」


 えっ?

 彼の笑顔が、昔のままなことに違和感を覚える。言っている言葉も、まるで何もなかったかのようで……、記憶が、欠落している?


「……」


 そんな訳ない、だって……、真間さんと平井さんの住むマンションをウロウロしていたことや、平井さんの家のドアを叩いていたこと、二週間前に私の買ったジューサーのショッピングバックに盗聴器を仕掛けた事、私の腕をつかんで強引に連れて行こうとしたこと、……は?


「やっと、こっちに来れたんだ、……美羽?」


 この人は、何を言っているの?

 まるで、私の隣に寄り添ってくれている真間さんなど、視界にも入れず真っ直ぐに、私だけを見ている焦点の合っていない瞳。

 五年前にあんな事をしたことさえ……、忘れたかのように振舞うの?


「……っ」


 五年前のように、同じ事を何度も繰り返し、言わなければならないのだろうか……。

 言い表せない恐怖と怒りに、背筋がどんどん震えて、泣きそうな気持ちになった。