氷の華とチョコレート


 真間さんは、顔をしかめたまま、二の腕から手を放し、ギュッと抱きしめてくれながら言った。


「こんなに震える相手がいるのに、夜無防備に出歩いたらダメだよ? あと、栗栖さんの前に、自分から姿をさらすようなことは絶対にしないで?」


 抱きしめてくれたまま、その腕が緩んで、見上げると真っ直ぐに見下ろす真剣な眼差しがあった。


「約束して? ……守れるものも、守れなくなるから」

「……はい、ごめんなさい」


 私の返事に、真間さんは大きく息を吐いてから、何をしていたのか教えてくれた。


「今日、何処かで見ていたみたいだね? 下のセキュリティーは、住人の振りをして、他の人の後ろから入れば実は簡単に入れちゃうから」


 そ、そんな簡単なセキュリティって? 正直怖いんですけど?


「今、平井さんが出張中で、もしいない間に来るようなことがあったら、動画を撮っておいてくれって頼まれてたんだよ?」

「……荒谷さんが置いているカメラ以外にも、動画が必要なんですか?」


 確か、定点カメラを置いてあると、荒谷さんが言っていたはず。