「……」
でもどうしてここに? 下にはセキュリティがあって入れないはずなのに……。
震えが止まらない自分の身体を、支えるようにギュッと抱きしめる。私の口元を押さえていた真間さんの腕が、自分を抱きしめる私の腕ごとギュッと片腕のまま抱きしめてくれた。
「ちょっと、なんなの? さっきからうるさくて眠れないんだけど?」
「このマンションの住人じゃないなら、管理人に通報するぞ?」
ガチャッと、直ぐ近くのドアが開いて、夫婦らしき男女が、栗栖さんに苦情を伝えていた。栗栖さんは、言葉にならない言葉を発して、こっちとは逆のエレベーターがある方へ走って逃げたようだった。
「行くよ?」
真間さんに背中を押され、階段を昇って彼の部屋へ帰る。ドアが閉まるや否や、息をつく間もなく真間さんに二の腕をつかまれて、真正面から怒られた。
「何考えてるの? こんな夜中にフラフラ出歩いて、あの人とバッタリ会ったら大変な事になってたんだよ?」
「ごめんなさい、起きたら真間さんがいなくて、気になってしまって……」
「……っ」


