少し怖かったけれど、部屋の番号を確認して、非常階段から下へ降りてみることにした。音を立てないようにゆっくりと降りると、半分降りた踊り場で、下にいる真間さんを見つけることが出来た。彼は、短い自撮り棒を持って、スマホで動画を撮っている? みたいに見えた。

 もしかして、さっきからドアを叩く人を撮っているの?

 音を立てないように、ゆっくりと降りて、声をかけてみることにした。


「……真間、さん?」


 驚いて振り返った彼が、すごい勢いで私の口を塞いで向こうの廊下をうかがった。相変わらずドアを叩く音が、向こうから聞こえて来ていた。


「静かに、絶対声出しちゃダメだよ!」


 もの凄く速く小さく、低い静かなトーンで言われて、背筋が冷たくなった。彼がわかるように大きく二回頷いて息をつく。


「美羽、……いるのは分かってるんだぞ? 出てこい! 聴こえてるんだろ?」

「……っ!?」


 さっきから叫んでいる、男の声と言葉が耳に入って来て、ビクッと身体が震えてしまった。ずっと叫んでいたのって、栗栖さんだったの?