氷の華とチョコレート


 緊張しながら、なんとかここに住んでいますと言う顔をして、真間さんの住むマンションのエントランスのセキュリティを開けて中へ入る。エレベーターで6Fを押して、誰からも見られなくなってから、私は大きく息を吐いた。


「緊張した?」

「はい、……大丈夫だったでしょうか?」


 見られているかも知れないと思うと、身体が固くなってしまって、ぎこちない動きになっていなかったか心配になる。私は少し震えていた自分の手をギュッと握りしめた。その手に、真間さんの手が重なって……、見上げるとふんわりと微笑むチョコレート色の瞳があった。


「うん、普通に見えてたよ?」

「……」


 よかった、演技をするみたいなことは、あまり得意ではないから……。エレベーターのドアが開き、六階のフロアを真ん中まで歩いて、真間さんが振り返る。


「さっきのカードキィここにさしてくれる?」

「はい」


 真間さんの借りている部屋のドアを開けると、そこにはやっぱり分譲マンションならではの、しっかりした綺麗な作りのお部屋があった。