氷の華とチョコレート


「私は、真間さんじゃないとダメなんですけど?」

「……」


 私の言葉に破顔一笑して、真間さんはいつものふんわりとした笑顔に戻ると、私の耳元に顔を寄せてささやいた。


「ありがとう、嬉しくて、ここがタクシーじゃなかったら、押し倒してたよ?」

「……っ!?」


 私は、あわてて耳を押えて真間さんから離れる。そんな私の反応にも、嬉しそうに笑う真間さんがいて、どんどん顔が熱くなってくる。

 もしかして少しイジワルなのは、素なのだろうか? こう言う冗談は慣れなくて困ります!


「あっ、あのマンションだよ?」


 ふいに、真間さんが指さした方を車窓から見ると、遠目だけれどいかにも高そうなマンションが建っていて……。

 えっ?


「……これ、普通の賃貸じゃないですよね?」

「うん、会社の上司の実家が持っているマンションで、空き対策でウチの営業に安く住まわせてるヤツだよ、さすがにこんなの買えないな、月の半分は出張に出てるのに」