氷の華とチョコレート


「眠れてないの?」


 カバーしきれなかった目の下のくまを見られてしまった……。バスタオルごとムギューッと、真間さんが私を抱きしめながら言う。


「一人になると、不安なのか中々寝付けなくなってしまって……」

「そっか……、ちょうどよかった、これからオレの家に数日間泊まってもらう予定だから……」

「えっ?」


 ま、真間さんの家に、泊まる? 予定って、決定事項みたいな言い方? ……私、知らなかったんですけど?

 思わず、くまのことも忘れて、真間さんを見上げてしまった。


「考えるって言ったでしょ? やっと帰って来れたから、色々出来そうだし?」

「……?」


 考えるって、確かに真間さんは言っていた、けれど……。それと真間さんの家に泊まるはイコールなのだろうか?


「とりあえず、会社に戻って報告書と経費の精算して社用車返さなくちゃいけないから、……ん~、二時間後にまた来るから、三、四日くらい泊まれる準備しておいて?」


 ふんわりといつもの笑顔でそう言って、有無を言わさず真間さんは、会社に行ってしまった。


「……」


 ずっと会えなかった二週間から、いきなり彼の家に泊まり? ふんわりとしているのに、少し強引な真間さんに頭がくらくらする。別の意味で眠れなくなりそう……。