氷の華とチョコレート


 真面目な話?

 KEYさんが、改まった声で言うので、つい背筋を伸ばしてしまう。


「はい、どうぞ?」


 KEYさんが、いつものぶっきらぼうな表情に戻り、私を見て一つうなずいた。


「氷室さんに盗聴器を仕掛けた男が、平井さんのマンション辺りに何度か現れています、オレが仕掛けた定点カメラに映っています、ここは大丈夫だけど、ショッピングモールには、まだ行かないで下さい」


 背筋がスッと寒くなり、心臓が嫌な音をたて始める。私は、ちゃんと立っていられるように、自分の身体をギュッと抱きしめた。

 KEYさんは、使用した機材をリュックにしまいながら、私を見て言った。


「またエーキ経由で連絡します、アイツがいない間に何かあったら大変だから、今週いっぱいで困った事があったらオレに連絡下さい」

「ありがとうございます」


 なんとか、笑顔を作ってお礼を言った。けれど、心の奥にしまっていた恐怖心が、私の中でどんどん広がっていく。


「氷室、美羽さん?」


 フルネームで呼ばれて、私はビクッと顔を上げる。


「オレの名前、荒谷敬二(あらやけいじ)って言います、今後はそっちで呼んで下さい」


 あっ……。

 目の前に引かれた線が、消えてくれたような気がした?


「はい、荒谷さん」


 KEYさんの本名、教えてもらえた。少しは、仲良くなれたのだろうか?