『今日は、比較的商談件数が少なかったから、大丈夫だけど……、無理しなくていいよ?』
「ありがとうございます」
私は、緊張してワケが分からない言葉にならないよう、一度深呼吸してから口を開く。
「……今日、現れた栗栖さんと言う男の人は、五年前に暁陽と菜摘も一緒だった、アルバイト先で知り合った先輩だったんです、そして…―――」
そして、三ヶ月付き合ってから態度が豹変したこと、困って暁陽と菜摘に相談したこと、その後のデートで彼の部屋に行き、そのまま部屋から出してもらえなくなったこと…―――
一つひとつ、話すたびに自分の心を切り裂いて、引き千切るような痛みがした。話ながら声が震えて、静かに涙が落ちる。
「……っ」
人形のように何もされず崇拝されたこと、その状態が四日間続き、五日目に心配して探してくれた暁陽と菜摘の二人に、助け出されたこと…―――
真間さんに、こんな過去を知らせなければならない事が、一番辛いんだと知った。


