氷の華とチョコレート


『一応、タクシーで帰った方がいいよ? 尾行防止ね』


「!? ……はい」

「じゃあね」


 そう言って平井さんは、盗聴器をポケットにしまうと、私達に手を振って、颯爽とコーヒーショップを出て行った。

 私と暁陽は、立ったまま平井さんを見送ってから、ドッと疲れたように椅子に座り込んだ。

 き、緊張した。盗聴器とか、怖すぎだよ栗栖さん……。


「もう、普通にしゃべって平気か?」

「うん、大丈夫そう」

「なぁ、あの人何者?」

「ね? ……真間さんの会社の先輩、とかしか知らない」


 後は、うちの秘書課の先輩方が騒ぐほどの迫力のあるイケメンだとしか……。そんな情報、暁陽はいらないだろうから、言わないけど。


「……普通じゃないよな? こう言うのに慣れてるのかな?」

「……うん、当たり前に名前伏せて喋ってた」


 これは、なんとなく怖くて、真間さんにも聞けない気がする……。

 取り合えず、少しコーヒーショップで休んでから、私と暁陽は、平井さんに言われたとおりにタクシーで、暁陽の家まで帰った。