氷の華とチョコレート


 平井さんが、意外そうに暁陽を見ていた。女の子が来ると思っていたんだろう。

 そうだ、名前出さないように言わなければ……。


「暁陽、ちょっと……」


 私は、彼の腕を引っ張って、空いている席に一緒に座る。


「えっ? ナニいきなり」


 私は、急いでスマホの画面を開いて打ち込んで、暁陽に見せる。


『今は、真間さんの名前出さないで喋ってね?』


「はぁ? 意味分かんねぇ」


『栗栖さんに、盗聴器、仕掛けられてるかも知れないの』


「!?」


 暁陽の顔が、一気に強張って私を見た。


「取り合えず、それに詳しい人が来てくれるって……」

「……分かった、で、あの男の人はダレか教えて?」


 私の前の席に座っていた平井さんを顎でさして、暁陽は私を見る。


「栗栖さんに、連れて行かれそうになった所を助けてくれた、私の彼の、会社の先輩で……」


 また私は画面に打ち込んで、暁陽に見せる。


『本当は、平井さんなんだけど、ここでは鈴木さんとして話してください』