犬猿の仲の彼の専属メイドになりました。



(・・・それでも、遥くんは私に話しかけてくることが多かったのよね)


きっとからかいたかっただけだろう。

面白みのない社交界に参加していたのは、いつまで経っても私の元に寄ってくる遥くんが可愛かったからだなんて、坊っちゃまには絶対言わない。





指定された中庭のベンチに行くと、坊っちゃんがふんぞり返って座っていた。


「ちゃんと来たようだな」


どこか満足げに見えるのは気の所為だろうか。

強制的に横に座らされるといつもの指示が飛んできた。


「早く眼鏡を外せ。髪下ろせ」
「はい」


正直髪は括っていた方が食事が摂りやすい。

眼鏡だって坊っちゃまに言われたからかけているだけで度は入っていない。私の視力は両目1.2だ。

特にこだわりがないから従ってはいるが、正直に言うとめんどくさい。


「おい眼鏡かけてから戻れ。髪も結べ」


食事が終わると開口一番にそう言われる。