犬猿の仲の彼の専属メイドになりました。

私は自覚していたよりも父に頑張りを認めてもらおうと頑張っていたのだ。

だからいつまで経っても傷が癒えてくれない。

私を見かねた遥くんが近づいてきて、ハタキを持つ私の手首を掴んだ。


「お前が『別に』って言うときは絶対何かあるやつだろ。掃除はもういいから話してみろ」
「・・・話したところでどうにかなるとでも?」


貴方が元凶でもあるのに。

そのことを分かっている遥くんはこれ以上何も言えなかった。

ずるいことをしていると思う。

それでも遥くんには話したくなかった。

これは私の年上としてのプライドからくるものだろう。

遥くんはため息をつきながら私の手首を離した。


「もう下がれ」
「畏まりました」


この時の私は明らかに視野が狭まっていた。

だから遥くんが何を思っていたのか全然気づかなかった。





「見て、雅楽代様よ」
「いつ見ても素敵なお方ね」


送迎車を降りるといつものように女子生徒たちが騒ぎ出した。