俺に対し冷めた態度をとり続ける凜に「遥くんありがとう」と言わせてやりたい。

それ後は今までと変わらず犬猿の仲と称されながら何だかんだ楽しく過ごしていくのだろう。

この時の俺はそうなると信じて疑わなかった。





凜が高校に進学するタイミングで菱川が雅楽代に吸収された。

そして予定通り凜が俺の専属メイドとして雇われることになった。


「本日より遥坊っちゃまと専属メイドとなりました、菱川凜と申します。これからどうぞよろしくお願いいたします」


シワひとつないメイド服、洗練された最敬礼、お団子に結われた髪の毛、そして無機質な瞳。

今までの凜はどこにもいなかった。

メイドとして現れた凜を前にして、初めて自分が間違っていたことに気づいた。

俺は凜を屈服させたいんじゃなかった。

勝ちたいとか上に立ちたいとかそんなのどうでも良くて、俺はただ、凜と対等でいたかったんだ。


だって、凜のことが好きだから。


あぁ俺は馬鹿なことをした。

気づくのが遅すぎた。