針間あさひside
週の半ば、水曜日。
お昼ご飯を食べて眠たくなり、頭が回らなくなってくる午後。
電話の音、コピー機の音、キーボードを叩く音。漂うコーヒーの香り。
オフィスに静かな抑揚のないお怒りの声が響く。
「小林、この資料誤字脱字多すぎだろ。俺に渡す前に読み返したのか。」
「す、すみませんっ。」
低く、冷静な声。音の波形で見たら一直線だろう。
それが逆に怖い…
「田中、この数字の粗利はどんな計算をすれば出てくるんだ?算数からやり直せ。」
数学でもなく算数って…
「すみませんっ。」
怒鳴るわけでもない。静かに理詰めする。
「鈴木、レイアウトのここは赤色って言ったよな?なんで勝手に青になってるんだ。」
「すみませんっ。」
でも言ってることはすべて正しい。