「実は酔った勢いで部屋に連れ込みました、とか言うと思った?」

「そういう意味じゃなくて……」

「何かされそうで泊まるのが怖くなったとか?」

「ち、違う! そうじゃない」 

 私は1日限りの恋人というチケットを貰い、ドキドキワクワクのジェットコースターに乗っている気分。この夢心地が現実かと不安は過ることはあっても怖くない。本当だ。

 誠が好き、もうずっと前から好きなの。仮初の彼女が言っても信じてもらえないだろうな。

「ーーねぇ、茜はカクテルに意味があるの知ってる?」 

「意味?」

「調べてみて。それが俺の気持ちだから」

 そう言うと誠は出ていってしまった。すれ違いざまにまだ湿る髪に触れられ、シャンプーの香りが舞う。誠と同じ香りを纏っていると思うと嬉しくなる。

 うん、私はこのまま帰らない。

 さっそくカクテルの意味を調べるため携帯電話を取り出す。と、ディスプレイに後輩からのメッセージが表示されていた。